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 【生涯学習】

《公開講座記録》【ことばと文学】第1回 関西共通語化と大和のことば ─大阪弁の変化と奈良方言─

第1回
●2020年10月17日(土) 午後1:30
●テーマ: 関西共通語化と大和のことば ─大阪弁の変化と奈良方言─
●講師  鳥谷 善史 国文学国語学科 非常勤講師

内容

現代日本語では全国で急速に「共通語化」(標準語化・東京語化)しています。関西の場合も同じような傾向にありますが、全く同じではありません。それは、「関西共通語化」という現象です。これは中核都市である大阪がことばの発信地となって関西全域に影響を及ぼしているということです。その要因は、交通網の発達による生活圏・行動圏の拡大やマスメディアの影響です。それら以外にも関西に住む人々のアイデンティティの表れではないかと発表者は考えています。

今回の講演では「関西共通語化」の実態とそれにより変化しつつある、大和のことば(奈良方言)の実態を、さまざまな調査結果から確認しました。とりわけ、発表者が編著者としてかかわった「真田信治監修・岸江信介・高木千恵・都染直也・鳥谷善史・中井精一・西尾純二・松丸真大編著(2018)『関西弁事典』ひつじ書房」の内容を中心に確認しました。

まず、最初にマスコミで良く取り上げられる「関西弁」と方言学の分野で用いられる「近畿方言」という範囲の異なりについて確認すると共に、関西弁の特徴や関西共通語(化)という学術用語の定義や「関西弁」の特徴を確認しました。詳細は以下の項目です。

1.近畿方言(≒関西弁)の範囲
2.関西共通語(化)とは
3.京ことばvs大阪弁 a.ハル敬語 b.否定辞ヘンとの接続
4.関西弁の特徴
   4.1音声・音韻
       a.母音 b.長呼と長音の短音化 c.子音 d.シとヒの交替 e.ザ・ダ・ラの混同 
   4.2 文法・表現法
       a.東西対立型分布と関西弁 b.「イル」と「オル」 c.否定辞(1) d.否定辞(2) 
   4.3語彙
       a.今川焼〈比較的新しい食物の呼び名〉 b.麦粒腫(京ことばVS大阪弁 メバチコVSメイボの結末)
その後、大和のことばに焦点をしぼり、伝統的奈良県方言の特徴や最新の調査結果からみられる実態について確認しました。

5.大和のことば
   5.1 奈良方言の特徴
   5.2 奈良方言の関西共通語化
   5.3 奈良方言の実態:動詞の否定表現から
   5.4麦粒腫(京ことばVS大阪弁と大和のことば)
とりわけ、「5.3 奈良方言の実態:動詞の否定表現から」では、国文学国語学科の国語学演習1・2で学生たちと共に調査した集計結果を用いてその実態を報告しました。(グラフ1) 

注:奈良県北中部生え抜き(南部方言域を除く)調査期間は2012年7月~2013年10月。第1位回答のみの集計。なお,本調査データは2012年度及び2013年度の天理大学文学部「国語学演習1・2」の授業において受講学生が中心となって集めたもので、現在(2020年)も範囲を近畿全域に広げて調査研究を継続しています。

また、「5.4麦粒腫(京ことばVS大阪弁と大和のことば)」では、今から約50年前の調査結果と最新の調査結果を詳細に確認することで、京都と大阪と奈良の関係をことばの側面から確認しました。(図1・図2)
最後に、方言を研究する目的や意義について以下の内容を中心に確認しました。

6.方言を研究する目的と意義
   6.1 日本語の歴史(日本語史)との関係(方言学)
   6.2 社会の変化と言語変化の相関(社会言語学)
   6.3 言語政策の基礎資料(社会言語学)

今後も学生たちと地道に調査を続けることで、上述の分野に貢献していきたいと考えています。

以上


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