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 【生涯学習】

《公開講座記録》【「大和学」への招待 ─王寺の歴史と文化─】第4回「おかげ参り」・「おかげ踊り」・「ええじゃないか」

第4回
●2020年10月11日(日) 午後1:30
●テーマ: 「おかげ参り」・「おかげ踊り」・「ええじゃないか」
●講師  幡鎌 一弘 歴史文化学科 教授

内容

 おかげ参りとは、伊勢への集団参宮のことで、慶安3年(1650)以後たびたび大流行した。文政13年(天保元、1830)のおかげ参りに付随して発生したのがおかげ踊りで、河内・山城・大和などで踊りかけを繰り返して拡大した。そのなかで、畠田村(現在、その一部が王寺町)の西山(明神山)への踊りかけが始まり、送迎(ひるめ)太神宮という新たな霊場が誕生した。本講演のメインテーマが、この送迎太神宮である。ええじゃないかは、慶応3年(1867年)5月に京都で発生するが、本格的には6月、三河国から広がって、近畿に再還流、それぞれの家(宿)に踊りかける例が多くみられた。降ったお札の多様性も特徴の一つである。

文政13年のおかげ参りは、3月中旬に阿波から発生した。きっかけはお祓い(御札)が降ったことで、以後、札の霊験が宣伝され、施行所に太神宮の札・御幣が祭られることになる。3月20日過ぎに数万人が大和に入り、伊勢に向かう街道のいたるところで施行所ができた。御所では、紀伊・阿波・大和・越後・播磨・石見・和泉・讃岐・河内を中心として、ほぼ全国の人が多かれ少なかれ宿を借りた。飯・酒・野菜などがふるまわれ、薬・草鞋が提供された。藤井村(王寺町)でも施行があった。

このような施行は、参宮者を支えようという街道沿いの人々の信心に裏付けられていたとは言えないところがある。多くの場合、道々で施行をすることで参宮者を村へ入れず、必要以上の負担を強いられないような予防線であったと考えられている。

参宮者の派手ないでたちは、まさに祝祭に他ならなかった。それに触発されるようにして、施行する側も派手な装束に鳴り物(太鼓・三味線・胡弓・鐘)を入れて踊り始めた。それがおかげ踊りで、伊勢参宮が下火になるにつれて盛んになった。5月に河内一帯に広がり、7月の大和への踊りかけがきっかけとなって、明神山への参詣が広がっていった。

西山には4月1日に御札が降ったといわれ、参詣が盛んになると、9月には郡山藩から社殿造立の許可を受けた。冬には本社ができ(11月頃と推定される)、鳥居・神馬などが奉納され、宇治橋や天岩戸も作られた。最初に御札が降ったところが内宮・送迎太明神、遅れて降ったところが外宮・亀山太明神と呼ばれた。亀山太明神がどこにあたるのかは今のところ不明である。翌年には茶屋・万金丹屋・三宝荒神が作られるほどであった。送迎社勧進所が出した「和州送迎太神宮之図」は畠田村の旧跡とともに当時の景況がよく示されている。

しかし、天保2年5月、ニセの皇太神宮として郡山藩主に取り払われてしまう。1年にも満たないうちにその姿は全く失われ、遺物の一部が町内に残されているだけである。

そもそも、なぜ西山(明神山)に多くの人々が集まったのだろうか。お札が降った場所という偶然もあったかもしれない。しかし、なにより大坂と大和を結ぶ物流の中心である大和川の結節点にあるということが大きかったことは疑いない。たとえば石燈籠・石鳥居の奉納者をみれば、一方に大坂の商人、もう一方に現在の天理市域の有力農民がおり、その間を媒介する藤井村、船問屋という構図になっている。

また、大坂周辺という視点で見れば、生駒聖天(宝山寺)・信貴山朝護孫子寺・能勢妙見・讃岐金毘羅のように大坂周辺地域に人々が集まってくる参詣場所がある。流行神といってもよい送迎太神宮の誕生は、大坂と地域の霊場との関係そのものといってよいだろう。

【参考文献】
荒井留五郎『奈良県の太神宮常夜燈』(私家版、1997年)。
王寺町史編集委員会編『新訂王寺町史』(本文編・資料編、王寺町、2000年)。
古文書を読む会「珍事録」(『会報「いこま」』創刊号、2003年)。
宮津市史編さん委員会編『宮津市史 通史編下巻』(宮津市役所、2004年)。
岩井宏實『奈良大和の社会史点描』(岩田書院、2010年)。
幡鎌一弘「近世後期の勧進・施行と祝祭—おかげ参り/おかげ踊り/「ええじゃないか」(島薗進他編『シリーズ日本人と宗教 —近世から近代へ 第4巻 勧進・参詣・祝祭』(春秋社、2015年)。
中井陽一「文政十三年おかげ参りに関する考察 : 大和国御所町の施行記録に基づいて」(『史泉』105、2007年)。

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