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 【リレーエッセイ 感染症と人類8】

ハンセン病患者に寄り添う:成人会の活動

澤井治郎 講師(人間学部宗教学科:天理教学 宗教学)

新型コロナ感染症の話題が世界をおおっています。その脅威は、感染による健康被害はもちろんのことですが、感染した人や集団に対する圧力あるいは差別によるものも大きいようです。感染症への恐れから、感染した人が忌避されることは、長い歴史のなかでも、往々にしておこってきました。その代表的な病の一つにハンセン病があります。

ハンセン病は、らい菌による感染症です。感染力は非常に弱いとされています(現在の日本での新規患者は年に1~2人)。にもかかわらず、特に、治療法が確立されていなかった頃には、患者の皮膚がただれたり、四肢が変形したりする外見上の特徴から、神仏によるバチが当たったとか、前世の罪業のせいなどと言われ偏見の対象となっていました。また、日本政府が、昭和6年の「癩予防法」以来、患者の療養所への強制隔離による絶滅政策をとり、昭和23年には「優生保護法」によってハンセン病患者の優生手術(避妊手術)が法的に認められて、「怖い病気」という世間の偏見や差別を一層助長したと言われています。この強制的な隔離政策は、結局、平成8年まで続きました。

昭和40年、天理大学成人会(宗教学科の学科会)は、ハンセン病療養所の慰問活動を始めました。また翌年には、ハンセン病元患者が各地の療養所から天理教教会本部を参拝する際、宿泊できる施設として天理市内に「別所母屋」が開設され、そこでの受け入れも行うようになりました。

当初は、慰問にでかけた先で「病気は怖くない? 園に来ることを、親に言ってきた?」と入所されている方から心配されることもあったそうです。厳しい偏見と差別が社会に根付いていた時代です。そうした中、人をたすける活動をしよう! との思いによって活動は精力的に続けられ、昭和40年に開始してから昭和50年までの10年間に、全国に13ある療養所のうちの12カ所を慰問、「別所母屋」において延べ約3,000名の参拝宿泊者を受け入れ、その他街頭募金やチャリティーコンサートなどを行ったことが記録されています。
奈良ソロプチミストから表彰(2005年)
奈良ソロプチミストから表彰(2005年)
さらにそこから半世紀近くがたった現在も、成人会は毎年、療養所を訪問するとともに、教会本部を参拝する療養所の方々を受け入れる活動を続けています。2005年には、国際ソロプチミスト奈良より社会ボランティア賞を受賞しました。

この取り組みが、実際に社会におけるハンセン病への偏見・差別を和らげるのに、どの程度役割を果たしたのかは、よく分かりません。しかし、この活動を続けてきた成人会の先輩方のおかげで、いまでは療養所の方々が、緊張する学生以上に胸をひらいて迎えてくださるようになり、学生は成人会の活動の中で、一番いろんなことを学んだ活動だと言います。今後も人に寄り添い、人との結びつきを大切にする活動を続けていければと思います。

参考文献
天理教療養所布教協議会編『ハンセン氏病布教史録』天理教国内布教伝道部、1976年。
天理教道友社編『明日への伝言』天理教道友社、2010年。

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