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 【生涯学習】

《公開講座記録》【人間学で読み解く現代社会】第3回 「超高齢社会」を生きるということ

第3回
●2022年6月11日(土) 午後1:30
●テーマ:「超高齢社会」を生きるということ
●講師  北垣 智基(人間関係学科 准教授)

内容

日本は超高齢社会であると同時に人口減少社会であるといわれています。そうしたなか、この講座では個々人の生活レベルに焦点を当て、どのように日々の生活を送ることができるのかを考えていきます。

まず、超高齢社会をどう生きるのかを考えるにあたり、そもそも超高齢社会とはどのような社会なのかを確認する必要があります。超高齢社会とは、人口の高齢化率が21%を超えた社会であり、その背景には長寿化や少子化が関係しています。このような人口構造の変化に伴って2008年頃から人口の減少がみられはじめ、今後さらに社会保障費の増大や生産年齢人口の大幅な減少等の問題が深刻化することが予測されています。そしてまた、超高齢社会は高齢期における個々人の健康・介護・お金などの不安・問題へ長期的に向き合うことを迫るものでもあり、これらへどう向き合っていくのかが課題となります。

次にみていきたいのが高齢期の生活課題と対応策です。高齢期には老化と呼ばれる様々な身体上の変化がみられ、少しずつ日常生活を送るために必要な動作・活動ができなくなり、生活へ悪影響が生じるようになります。したがって、老化を遅らせること、またそのサインを早期に発見し対応していくことが重要です。その一つの方法として挙げられるのが、厚生労働省が作成している「基本チェックリスト」です。これは25項目の質問に答えることで、生活上の多面的なリスクの状態を知ることができるものです。近年では「フレイル」も注目されてきています。フレイルとは「虚弱」を意味する概念であり、要介護状態に至る主要因にもなっています。フレイルのリスクを早期発見するために「フレイル・チェック」が開発されており、「指輪っかテスト」や「イレブン・チェック」等の方法で確認することができます。またフレイルを予防するためには「栄養をとる」、「運動をする」「社会参加をする」という3つのポイントがあり、三位一体的に取り組むことで効果的にフレイル予防ができるとされています。

最後にみておきたいのが介護保険制度の動向と問題点です。介護保険制度が導入される際には、医療保険と同じように保険料と一部自己負担をすることによって、介護が必要な状態になれば、いつでも、どこでも、誰でも介護サービスを選んで利用できる、という宣伝が行われました。しかし2000年以降の介護保険制度改正の動向をみると、やや異なる様相にあるようにみえます。2005年の改正時には入所施設の利用者に対して居住費や食費が「ホテルコスト」として新たに課されるようになり、2014年の改正時には特別養護老人ホームの入居条件が原則要介護3以上となりました。同年には一定の所得がある人の自己負担が2割となり、2017年の改正でさらに3割となりました。2020年の改正でも利用者に対して更なる自己負担を求める改正が行われました。こうした状況のなかで、私たちには何ができるのでしょうか。もちろん個人でできること、家族や地域内の身近な者同士で支え合うことも必要です。しかし、それにも限界はあります。したがって、国民の生存権保障の最終的な責任を負っている国の責任を、市民の側から問い続けていく必要もあります。そのためにも、介護保険に関心をもち、その動向や問題点について学習していくこと、そして自治体や国に対して声を届ける活動へ参加することなどが求められます。

アメリカの文化人類学者であるマーガレット・ミードによる「未来とは今である」という言葉があります。ここまでみてきたとおり、超高齢社会で生きていく際には様々な不安がみられます。しかし、私たちは不安を抱えて生きることしかできないわけではありません。個人でできることは何か、家族や地域で助け合えることは何か、そして社会(国)の役割は何か。いまここから、それぞれについて考え、向き合っていくことができるはずです。

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