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 【人文学部クロストーク&教員コラム】

文化財の保存と活用1 人材育成は待ったなし

歴史文化学科教授・桑原久男×人間関係学科生涯教育専攻教授・佐々木保孝

※2024年に予定している天理大学の改組によって生涯教育専攻は社会教育学科となります。

「文化村」を通して生まれた連携

(桑原) これまで、歴史文化学科と生涯教育専攻は、博物館学芸員課程の科目を分担していましたね。「なら歴史芸術文化村」(以下、文化村)が完成して、文化村での活動が増えてから、両学科・専攻の交流は深くなりましたね。
 
(佐々木) そうですね。私が窓口になっていた文化村のボランティアに歴史文化学科の学生さんが真っ先に手をあげてくれましたし、「生涯教育特論」も受講してくれています。
 
(桑原) どんな授業をされているのですか。
 
(佐々木) 先日の「生涯教育特論」では、chatGPTで「文化財保護法や博物館法の改正の背景」を作文させてみて、その回答のどこに問題があるかを探り、みんなで話し合ってみました。
 
(桑原) chatGPTは最新の話題ですね。
 
(佐々木) 昨年度は、文化村の施設を見学し、文化村の学芸員による出前授業を行いました。本年、令和5年度では、同様に文化村を見学して、文化村とその周辺地域を念頭においた模擬企画事業を計画しています。学生の企画を文化村で発表し、施設職員さん、学芸員さんにも見ていただくように考えています。また、文化村のサポーターとなって活動した学生には「生涯教育実習3」で単位を出します。
 2024年度の改組で生涯教育専攻は社会教育学科になりますが、そのあとも文化村での活動を一層深めていくつもりです。文化政策にかかわっている教員を招いて関係する授業を増やし、新しく置く「地域協働実習」でも文化村と連携することを柱として考えています。文化村の学生サポーター活動は全学的に広げていきたいと思っています。
 
(桑原) 歴史文化学科の学生にとっても魅力的ですね。
なら歴史芸術文化村で活動する学生サポーター
なら歴史芸術文化村で活動する学生サポーター

地域資源として活用する文化財に

(佐々木) ところで、素朴な問いなのですが、昨今、博物館は社会貢献するように求められていて、学芸員・研究者のなかで葛藤を生んでいるようなことはありませんか。ちょっと前までの博物館では、調査研究し保存していくことが仕事の中心で、「伝える」ことはどちらかといえばセカンドランクだったと思いますし、ましてや「地域」に発信して何かを「つなぐ」といったことは多くのところで本業ではなかったのではないですか。
卒業生が携わった唐古・鍵遺跡史跡公園の道の駅
卒業生が携わった唐古・鍵遺跡史跡公園の道の駅
(桑原) 文化財保護法の改正で、「文化財の保存と活用」は待ったなしの課題になりました。現場でなぜ葛藤が生じるのかということに関しては、私もかねがね関心を持っていて、少し整理して考えたことがあります。遺跡を訪れ利用しようとする人のタイプはおおよそ二つ。考古学の知識をもとに、文化財としての遺跡を訪れる見学者。それから観光資源として地域の活性化をねらった企画などによって訪れる観光客。それぞれ目的が違いますが、文化財の担当者はそのどちらも応えていかなければならなくなります。田原本町に文化財担当として就職した卒業生が、唐古・鍵遺跡史跡公園の道の駅の整備にかかわっていました。これも二つの要素を持った施設で、保存と活用を両立させるのは大変な努力が必要ですね。
(佐々木) 歴史文化学科では「文化財の保存と活用」といった問題にどのように対応されているのですか。
 
(桑原) もともと歴史文化学科での学びは、歴史学(文献史学・日本史)、考古学、民俗学が三つ巴になっています。どの学問分野においても、それぞれの研究対象、たとえば歴史学なら古文書、考古学なら遺跡や遺物、民俗学なら伝承や芸能・祭礼などがあり、それらは専門的な研究資料であると同時に、文化財、文化遺産として現代的な意味や価値をもっています。
大学近くの古墳で出土した埴輪を持つ桑原久男教授
大学近くの古墳で出土した埴輪を持つ桑原久男教授

(桑原) 歴史文化学科としては、まず、それぞれの価値や保存のための知識を身につけることが大切で、改組では三つの分野それぞれで「文化財」にかかわる講義や実習を増やしました。そのうえ、「文化財行政学」を必修科目にして、文化財の現況に対する理解を深めていくようにしています。

 

(佐々木) 社会教育学科と重なる点も多いですね。

 

(桑原) 文化財はみな地域に密着した存在であり、保存・継承されるだけでなく、地域資源として活用の対象になっています。歴史文化学科でも、こうした方向性を受けて、地域と連携しながら、さまざまな取り組みを進めています。

 これらの活動は、大学のHPの「歴史文化学科だより」を見ていただけたら、その一端がわかっていただけると思います。

二つの学科で文化財に関わる人材養成を

(桑原) 歴史文化学科では、文化財に関わる人材を養成することが改組の強調点になっています。歴史文化学科では、市町村などの自治体で文化財の専門職として活躍している卒業生が数多くいます。私の担当する「文化遺産の保存と活用」の授業では、そうした卒業生たちをゲストスピーカーとして大学に招き、文化財に関わる仕事について学生たちに話してもらう取り組みをしてきました。
(佐々木) 新しい人文学部にはいろいろな分野で優れた専門の先生方がおられますし、大学のみならず近所に新しいコンセプトの施設があるというのも、恵まれた条件です。社会教育を扱う大学であっても、図書館と近いところはいくつかありますが、博物館、文化施設と正面から向き合える場所はあまり多くないですよね。天理大学の特長になるよう、今、種をまいている活動をおおきく成長させていきたいです。
なら歴史芸術文化村で連携授業に取り組む佐々木保孝教授
なら歴史芸術文化村で連携授業に取り組む佐々木保孝教授
(桑原) ひとつ、指摘しておきたいのですが、各自治体では、社会教育に関わる部署と文化財に関わる部署は、どちらも教育委員会のなかにあることが多いですね。改組後の新しい人文学部では、歴史文化学科の学生たちが社会教育学科の科目を履修し、社会教育学科の学生たちが歴史文化学科の科目を履修するというように、歴史文化学科と社会教育学科がこれまで以上に連携しながら教育・研究にあたることができると期待しています。

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